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改革をすすめる教育長と半信半疑の教員。断絶を乗り越えられるか?

「管理され決められた授業」に、教員が慣れきってしまっている。

■分からない。なら聞いてみたか?

 そうであるなら、校長や市教委に説明を求めるべきではないだろうか。それを質問すると、「それは、やっていません」との返事がもどってきた。

 福山市の小学校に勤める教員にも「教育長の授業」について訊いてみると、「おかしな授業という感想ばかりです。目標が見えない、何をゴールにするのか分からない授業では、不安なんです」という答が戻ってきた。ああいう授業のほうが基礎・基本も身につくというのが教育長の言い分らしいですが、ほんとうかどうか信じられないでいる。そういう「揺れ」が、教員にはあります。

 その小学校教員にも、校長や市教委にもっと説明を求めるべきではないか、と質問してみた。それに、彼が答えた。

「校長も分かっていませんよ。市教委のほうも手探りでやっているんじゃないかと思います。だから、訊いてみても、わかりませんよ」

 市教委と教員のあいだでは信頼感が欠けている、と言うしかない。それには広島県、そして福山市の、歴史的な問題にも原因があるようだ。広島県は福山市もふくめて、いわゆる「管理教育」が徹底していた地域でもある。先ほどの小学校教員が説明した。

「学習指導要領で決められた時限数を厳守するために、やることを教育委員会が決めて、校長に降ろしてきます。それを校長権限で強制されて、教員は意見を述べることもできず、職員会議も上で決まったことを伝えるだけの場で、議論する余地なんてありません」

 彼の話は、まだ続く。

「授業にしても、授業を初めるときに、その時限の狙いを必ず板書しなければならない、そして授業時間内にきっちりまとめて、最後には『まとめ』を生徒に示さなければならないと決められていました」

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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